
「この部品はスナップフィットでつけよう」って言われても・・・

何から手をつけていいのか分からないよ

設計方法はなかなか体系的にまとまってないからな・・・

今回はスナップフィットの設計方法を詳しく教えてあげよう
手順に従って落ち着いて進めれば大丈夫だよ
スナップフィット設計 -全体の流れ-
スナップフィットの設計は次の流れで行います。
設計サンプルもたくさん用意したので、ぜひ参考にしてください。
スナップフィットを引張って外れるようにするか決める
一度はめたスナップフィットを、引張って外れるようにするか決めます。
引張って外れるかどうかでツメの返し部分の形状を決めることができます。
ツメの返し部分を90°にすると、破壊しない限りは引張っても外れなくなります。

ツメの返し部分を90°以下にすると、角度に応じて引張って外す際の力が決まります。

スナップフィットを着脱する頻度を考える
スナップフィットを着脱する頻度を決めます。
着脱の頻度によって、スナップフィットを外す仕組みを用意する必要があります。
プラモデルの組立などに用いられます。
一度組み立てたら外すことはできません。

一般的な部品に用いられるU字型のスナップフィットです。例えば修理のときに外します。

リモコンの電池蓋は交換のたびに着脱します。
スナップフィットを外すためのタブがついています。

スナップフィットを扱う人を考える
あなたが設計しているスナップフィットを着脱する人が誰かを考えます。
スナップフィットを扱う人によって、求められる機能・形状が変わってきます。
子供
子供は力が弱く、細かい操作をすることもできません。スナップフィットの扱い方も乱暴になると考えられます。
子供向けのスナップフィットとしては、例えば図のような圧縮型のものが挙げられます。おもちゃのドアを開閉する部分についています。
圧縮型は壊れにくく、ドアのどの部分を動かしてもスナップフィットを着脱させることができます。

大人・一般人
大人・一般人は子供に比べて、力が強く、細かい操作も可能です。説明書を読んだり、マークの意味を理解してスナップフィットを操作できます。ドライバーや細い棒状のツールを扱うこともできます。
図は二つの部品が着脱可能に組立られた状態です。横の穴にドライバーを指せば外すことができます。
プラモデルやコネクタによく使われます。

作業者・工事業者
作業者・工事業者は教育を受けることで一般人では知りえないスナップフィットの着脱方法を習得します。また、スナップフィットを外すための特殊工具を作業者だけに配れば、一般人にスナップフィットを外される心配がなくなります。
図は回転する部品が特定位相でのみ、スナップフィットを外すことができます。外し方を知らなければ、まず外すことはできないでしょう。
Coming soon…
設計サンプルからおおまかな形状を決める
設計サンプルからおおまかな形状を決めます。
ここまで紹介した、「スナップフィットを着脱する頻度」と「スナップフィットを扱う人」ごとに設計サンプルを掲載しています。
これに加えて、あなたが設計している部品のスペースやコストを考慮しておおまかな形状を決めます。
引張って外れるかどうかによって、ツメの返しの角度も修正します。

【×】はそもそも非推奨です。サンプルは適宜追加していく予定です。
当然ですが、ここに掲載している形状がスナップフィットの全てではありません。
設計している部品に合わせて、形状を組み合わせたり修正してかまいません。
円筒のスナップフィットはこちらのページにまとめてあります。
円筒型のスナップフィットを検討している場合はぜひご覧ください。
スナップフィットの主な設計値を決定する
各スナップフィットに梁のたわみの式を適用します。
適切な着脱力や強度が出るように、下記を決定・計算します。

計算方法は様々なサイトで紹介しています。
計算ツールを掲載しているサイトもあるので活用しましょう。
計算ツール
ポリプラスチックス株式会社様
https://www.polyplastics.com/Calc/snapfit.do?_LOCALE=JAPANESE
計算方法
テクノUMG株式会社様
https://www.t-umg.com/jp/products_umg_info/6_list_detail.html
必要な着脱力や強度に対して、スペースが足りない場合は1STEP戻って、おおまかな形状を選びなおします。
スナップフィット設計上の注意点を盛り込む
スナップフィットのおおまかな形状と設計値が決まったら、最後の仕上げです。
スナップフィットでやりがちな注意事項をまとめたので、可能な限り対策を盛り込みます。

まだ続くんですか・・・

最後の仕上げだ
品質を限界まで高めるんだ・・・
①肉厚を均一にする
肉抜きを忘れて、スナップフィットの腕が曲がったら台無しです。
先端の肉抜きも忘れがちなので注意してください。

②スナップフィットの根本を補強する
根本が壊れやすいのでRやリブをつけて補強します。


③折れ防止形状をつける
イジワルでスナップフィットをたわませても壊れないように、衝突する箇所を設けます。
u字スナップフィットなどは不要です。

④適切な隙間を設定する
公差を考慮して設定します。
経験的には小型家電メーカーに勤めていたときは0.1~0.2mmが目安でした。
⑤ツールがアクセスする形状を設ける
忘れると外せなくなってしまいます。工具が入るスペースも確認しましょう。

⑥アンダーカットを処理する
アンダーカット部分は金型用の穴をあけて、2方向金型で処理できるようにします

いまいち理解できない人は、金型のページで詳しく説明しているので、ぜひご覧ください。
⑦付け間違い防止形状にする
スナップフィットの部品が逆向きに付いてしまうことはありませんか?
他の場所のスナップフィットに付けることはできませんか?
左右非対称にしたり、1つずつスナップフィットの位置を変えておきます。

あるいは、ベルトのバックルのように、逆につけても問題ないようにしましょう。

まとめ
今回はスナップフィットの設計方法を解説しました。
上から順に対応していけば、スナップフィット設計の要点をおさえることができます。
注意事項ではよくありがちなスナップフィットの設計ミスを紹介しています。
全て対応するのは大変ですが、最後の仕上げと思って手を抜かないようにしましょう。
参考文献
- オーム社 JISにもとづく機械設計製図便覧(第9版)
- 技術評論社 図解でわかるはじめての材料力学
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