
この金型の食い切りは無理ですよ~

アハハ・・・すいません、修正しときます~
(食い切りってなんだ・・・?)

ベンさん~
食い切りってなんですか?

知ったかぶりせず、その場で確認しなきゃダメじゃないか

今回は食い切りとは何か教えてあげよう。
それと食い切りの問題点やどう修正したらいいかも教えてあげよう
金型の構造をおさらい
まず金型の基本的な構造について簡単におさらいしておきます。

金型はキャビティ・コアから構成されます。
キャビティとコアを閉じて、隙間に溶けた樹脂を流し込みます。
冷まして樹脂が固まってから、キャビティ・コアを開いて部品を取り出します。
これは金型の断面図のアニメーションです。

金型の食い切りとは
金型の開閉方向に沿った合わせ面を持つ金型構造を食い切りといいます。
また、型開き方向に沿った合わせ面を食い切り面といいます。

こんな感じのツメ形状を持つ部品つくる時に使います。

ツメ形状を作る場合、コアの一部がキャビティ側に飛び込んできます。
型の開閉方向に沿ってコアとキャビティの合わせ面をつける必要があります。

このような構造を食い切り構造といいます。
図の垂直面を食い切り面といいます。
「食い切り」の使い方は、例えば次のように使います。

この金型の食い切りのところが加工できません。
食い切り構造の問題点
食い切り構造は何が問題なのでしょうか?
実は垂直な食い切り面は金型を損傷する恐れがあります!
垂直な食い切り面は少しでも位置がズレると
キャビティとコアがぶつかってしまいます。
実際に垂直な食い切りの金型を閉じてみましょう。


ドキドキ・・・


ひえぇぇッッ~!


スレスレだ・・・
図のように食い切りが垂直面の場合、キャビティとコアはまったくズレが許されません。
もしも金属のキャビティとコアがぶつかったら・・・下手すると大事故になってしまいます。
食い切り構造の設計上の注意点
では金型に食い切りがある場合にはどうすればいいのでしょうか。
食い切り構造を設計する際の注意点を紹介します。
金型の食い切り面に勾配をつける
金型の食い切り面に勾配をつけることで、
キャビティとコアの位置合わせが楽になります。

今度は食い切り面に勾配をつけました。

キャビティの角とコアの角がギリギリですれ違うことがなく安心です。

多少ずれても勾配があるので金型が閉じてくれます。

食い切り面の勾配の目安は5°以上つければいいでしょう。
加工メーカーの技術や、部品のサイズによっては3°~できる場合もあるようです。相談してみましょう。
金型の食い切りに押し切り面をつける
ツメ形状をつくる場合に知っておきたいもう一つのテクニックがあります。
それは、金型の食い切り部分に押し切り面をつけることです。
部品の形状はこんな感じです。


押し切り面とは金型の開閉方向に対して垂直な面でキャビティとコアが当たる面のことです。


食い切り面に勾配をつけただけだと、バリなどの不具合が発生しやすいです。
押し切りがあれば、金型が隙間なく閉じるのでバリが発生しにくいです。
目安として押し切り代は幅2.0mm以上つけるといいでしょう。

参考文献とまとめ
この記事は以下の書籍・文献を参考にしています。
- オーム社 JISにもとづく機械設計製図便覧(第9版)
- JEITA 三次元CAD情報標準化専門委員会 3DA モデル 金型工程連携ガイドライン
この記事のまとめ
- 金型の食い切りとは型開き方向に沿った合わせ面を持つ金型構造のこと
- 食い切り面には5°以上の勾配をつけよう
- 押し切り代を2mm以上つけてバリを防ごう。
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